2020/03/30
藤久運輸倉庫株式会社
- 101~300人
- 製造業/その他
ドライバーの健康起因事故を防ぐため毎日のデータ収集で社員とその家族を守る
刈谷市・東京・大阪に拠点を置き、商品輸送・保管・荷役を中心に日本の物流を担う藤久運輸倉庫。トラック輸送だけでなく、グループ企業で貸切バス・観光バスの運行などのバス事業、自動車整備業も手掛けています。運輸業界を取り巻く厳しい現状の中で、中小企業としてドライバーの健康管理をいかに適切に行うか。そして、社員とその家族に対して心身の健康をどうサポートしていくか。全社一丸となって取り組まれる健康経営とその成果について伺いました。
健康起因事故を未然に防ぐ先進的システムの導入
近年、運輸業界では、ドライバーが疾病により運転を継続できなくなる健康起因事故が相次いでおり社会問題となっています。従業員が健康起因事故を起こした際、会社の健康管理に不十分な点があれば事業者も責任を負わなければなりません。法令では、雇い入れ時と年1回の健康診断や毎日の点呼等が義務付けられていますが、藤久運輸グループでは、これらに加え、血圧データの収集や人間ドックの受診、ドライバーの睡眠時無呼吸症候群(SAS)検査などの対策も行っています。さらに「年1回の健康診断の結果が正常であっても、その診断はその時点だけのもの。病気の兆しをいち早くとらえて未然に防いだり、普段の生活サイクルを見直す仕組みができないだろうか」と考えた久米社長は、全ドライバーを対象に睡眠時間・歩数・血圧・体温といったバイタルデータを日々収集できるリストバンド型活動量計を導入。これらのデータを活用することで、より具体的に産業医の診断や指導を受けることが可能になりました。
経営管理部総務課主任の小山善史さんは、「取り組み始めた頃は、面倒くさがるドライバーもいましたが、自分の健康の状態が数値やグラフとして目に見えるので、だんだん自分の健康に気を付けるようになってきたのでは」と従業員たちの変化に手応えを感じています。
経営管理部総務課主任の小山善史さんは、「取り組み始めた頃は、面倒くさがるドライバーもいましたが、自分の健康の状態が数値やグラフとして目に見えるので、だんだん自分の健康に気を付けるようになってきたのでは」と従業員たちの変化に手応えを感じています。
社員と家族の幸せのために企業がすべきこと
久米社長が健康経営を意識したきっかけは、社員やその家族が病死する、という悲しい出来事に遭遇したことでした。「自分の健康は自分自身で管理するものだが、会社として何かすべきことはなかっただろうか」と自問自答し、社員とその家族が安心できる企業になることを誓いました。配偶者の健康診断費用を一部会社負担としたり、家族の健診データを提供してくれた人には御礼を渡したり、社員の誕生日には社長直筆のカードとプレゼントを用意したり…と、社員と家族に寄り添った取組を行っていきました。
また、藤久運輸倉庫の4事業所のうち3事業所はストレスチェックの実施義務のない50人未満の事業所ですが、パート社員や短時間勤務者も含めすべての社員に対してストレスチェックを行っています。現在、メンタルヘルス不調による休職者はおらず、こうした取組の成果が出ているといえるでしょう。
また、藤久運輸倉庫の4事業所のうち3事業所はストレスチェックの実施義務のない50人未満の事業所ですが、パート社員や短時間勤務者も含めすべての社員に対してストレスチェックを行っています。現在、メンタルヘルス不調による休職者はおらず、こうした取組の成果が出ているといえるでしょう。
サンクスカード:カードで感謝を伝え合い、働きがいのある職場作りを目指す
心身の健康作りのために新たに行ったのは「サンクスカード」の取組です。
従業員が感じた小さな「ありがとう」を相手に文字で伝えることで、こころの交流を深めるのがねらいです。各部署にある社員個人のポストにサンクスカードを投函する仕組みで、昨年の投票数は全社合計2,147枚にものぼりました。そして、年1回、最多投票者・最多獲得者には会社から褒賞が与えられます。
従業員が感じた小さな「ありがとう」を相手に文字で伝えることで、こころの交流を深めるのがねらいです。各部署にある社員個人のポストにサンクスカードを投函する仕組みで、昨年の投票数は全社合計2,147枚にものぼりました。そして、年1回、最多投票者・最多獲得者には会社から褒賞が与えられます。
健康経営優良社員表彰:健康経営の取組に対する従業員のモチベーションを高める
健康経営には、従業員のモチベーションを高める工夫も必要です。そこで、「健康経営優良社員表彰規定」を新設し、定期健診の受診、有給取得日数6日以上など、会社で定めた4項目の達成者には年末の納会時に褒賞(表彰と褒賞金)を与えることにしました。定めた項目は、全従業員が達成可能なもの。経営管理部長の長坂充久さんは、従業員のモチベーションを高める為には「すべての人が楽しんで取り組める仕組みにより、職場の雰囲気を高めていく事が重要」と語ります。その実践の仕方にもコツがあるようで「例えば、経営管理部では『ドライバーにとって、質の良い睡眠を心掛けるのは、仕事のひとつ』と繰り返し伝えています。毎日繰り返すうちに、身体が自然に動いてくるようになります。まずは健康の大切さを理解させ、会社で決められたことをきちんとやり通してもらうのです。そして、その行動を会社が認めることも重要です。そのうちに、それ以外の部分も自ら気を付けるようになります」と教えてくれました。
健康経営への投資が好循環を生む
「これらの先進的なアイデアはほとんど社長から生まれています」と経営管理部長の長坂充久さん。しかし、久米社長は「健康経営を成功させるには、トップダウンでスピーディーに行うことが重要ですが、それには経営者の考えを理解し、きちんと実行できるブレーンの存在が鍵です。今は安心して任せられる体制ができていますよ」と頼もしい経営管理部の働きに太鼓判を押します。
「健康経営を始める前と後では、その差が歴然と出ています。単に従業員が健康を意識するようになっただけでなく、従業員たちの間で会社に愛着を持ち、主体的な働き方ができるようになったことは、非常に大きな変化です。また、運輸業界は人手不足と言われていますが、これらの取組によって、良い人材を多く確保することができています。確かにコストはかかりますが、好循環が生まれ、確実に利益に結びついてきたことを実感しています」。
「健康経営を始める前と後では、その差が歴然と出ています。単に従業員が健康を意識するようになっただけでなく、従業員たちの間で会社に愛着を持ち、主体的な働き方ができるようになったことは、非常に大きな変化です。また、運輸業界は人手不足と言われていますが、これらの取組によって、良い人材を多く確保することができています。確かにコストはかかりますが、好循環が生まれ、確実に利益に結びついてきたことを実感しています」。
活用へのアドバイス
【代表取締役 久米博明さん】
運輸業界は様々な厳しい課題を抱えており、その中でひとたび事故が起きれば、事業者側の損失だけでなく、事故の当事者やその家族の人生まで悲惨なものに変えてしまいます。ですから、必要なところにはしっかりコストをかけてリスクヘッジをしなくてはなりません。コストがかかる部分は当然、経営者の決断が必要ですが、風通しの良い職場環境であれば、社員からも良い意見が出てきます。私どもの会社では、社会貢献や健康経営において社内から横断的にメンバーで組織される「委員会」があり、そこでの活動も活発に行われています。健康経営に取り組むことによって、組織全体で会社を盛り上げようとする機運が高まっています。
運輸業界は様々な厳しい課題を抱えており、その中でひとたび事故が起きれば、事業者側の損失だけでなく、事故の当事者やその家族の人生まで悲惨なものに変えてしまいます。ですから、必要なところにはしっかりコストをかけてリスクヘッジをしなくてはなりません。コストがかかる部分は当然、経営者の決断が必要ですが、風通しの良い職場環境であれば、社員からも良い意見が出てきます。私どもの会社では、社会貢献や健康経営において社内から横断的にメンバーで組織される「委員会」があり、そこでの活動も活発に行われています。健康経営に取り組むことによって、組織全体で会社を盛り上げようとする機運が高まっています。